税理ノート

草の根寄附を促す寄附金税制の拡充の方向性

草の根寄附を促す寄附金税制の拡充の方向性

現行の所得税における寄附金税制は、所得控除と税額控除の選択制が採用されており、平成23年の改正で控除額が拡大されたことから、納税者にとって魅力的な制度であると評価できる。しかしながら、その活用状況は十分であるとは言い難い。寄附金控除が十分に利用されていない要因として、制度自体の複雑さや手続きの煩雑さが指摘されている。実際、2,000円以上の金銭寄附を行った納税者の半数以上が確定申告を行っていないという調査結果も存在する。これは、制度の正確な理解不足と、手続きを面倒と感じる層が一定数存在することを示唆している。

「新しい公共」の概念が目指すのは、高額所得者の寄附を促すことよりも、「草の根的寄附の促進」である。この政策方向性には、寄附金税制の控除額を拡大するなどの制度自体を魅力的にする方向性よりも、手続きを簡便化し、使い勝手の良い制度にすることが合致すると考えられる。控除額の拡大は高額所得者に有利に働きやすく、草の根寄附の促進という目的とは必ずしも一致しない可能性がある。また、足切り額の撤廃も、確定申告が前提となる現状では税務執行上の煩雑さを伴うことが予見される。

我が国では源泉徴収制度が広く普及しており、多くの給与所得者は年末調整によって課税関係が完結するため、確定申告を行う必要がない。このような状況下で、わずかな寄附のために不慣れな確定申告を行うことは、納税者にとって高いハードルとなっている。ふるさと納税のワンストップ特例制度が手続きの簡素化によって利用者を大幅に増加させた実績は、手続き簡素化の有効性を示している。このことから、所得税の寄附金控除についても、既存の年末調整制度に組み入れることが、手続きの簡便化に資すると考えられる。

しかし、寄附金控除の年末調整対象化は、過去に源泉徴収義務者の事務負担増加を理由に退けられてきた経緯がある。現行の源泉徴収制度および年末調整制度は、徴税コストの削減に貢献する一方で、控除項目の複雑化や働き方の多様化などにより、源泉徴収義務者の事務負担が過大であるという問題が指摘されている。さらに、年末調整では雑損控除、医療費控除、寄附金控除は適用対象外であり、これらの控除を受ける給与所得者は確定申告を要する。また、年末調整における雇用主への個人情報提供は、プライバシー保護の観点から問題視されており、寄附先を申告することで個人の信条や政治思想が露呈する懸念も存在する。

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