所得税法における寄附金の定義と特定寄附金
所得税法において「寄附金」の明確な定義は存在しない。個人の寄附は、所得の任意処分性が強いと認識されており、事業所得等における必要経費として認められにくい傾向にある。このため、税制上の優遇措置の対象となる寄附金は厳格に限定され、「特定寄附金」として規定されている。特定寄附金とは、国や地方公共団体、公益法人、認定NPO法人など、公益性が担保された団体への寄附を指す。現行の所得税における寄附金税制では、所得控除方式と税額控除方式の選択が可能であり、多くの納税者にとって税額控除方式が有利となる場合が多い。
しかしながら、寄附金控除は年末調整の対象外であり、その適用を受けるためには納税者自身が確定申告を行う必要がある。この確定申告の煩雑さが、寄附金税制の利用を阻害する主要な要因の一つとして指摘されている。過去には寄附金控除の年末調整対象化が検討されたものの、源泉徴収義務者(企業等)の事務負担増大を理由に見送られてきた経緯がある。具体的には、対象となる寄附先の確認作業の負担が課題となる。例えば、認定NPO法人だけでも1,275法人が存在し、生命保険料控除の対象となる保険会社数と比較しても、その確認作業は膨大である。また、所得控除と税額控除の有利不利判定の複雑さ、さらには寄附者の思想・信条に関わるプライバシー保護の懸念も、年末調整への組み入れを困難にする要因として挙げられる。これらの実務的課題が、寄附金控除の普及と利用拡大を妨げていると考えられる。