税理ノート

寄附金税制の理論的根拠

誘因と所得計測

寄附金税制の理論的根拠は、主に三つの視点から捉えられている。第一に「誘因」としての寄附金税制である。これは、本来所得から控除されるべきではない寄附に対し、民間の公益的活動の発展に資する望ましい行為を促すため、政策的に租税を軽減する措置であるという考え方である。寄附という行為に対して税制を通じた恩典を授けることで、寄附を奨励する目的を有するとされる。

第二に「多元主義」の表れとしての寄附金税制が挙げられる。公共財の提供は国家の役割とされるが、国家がその全てを担いきれない場合、多様な価値観や選好を反映する非営利組織への期待が生じる。寄附金税制は、こうした組織への資金提供を、個人の多様な価値観を承認し育成するという観点から税制面で支援するものである。この考え方においては、国家が寄附先の活動内容を詳細に判断することには違和感があるとされる。

第三に「所得の計測機能」としての寄附金税制が存在する。これは、寄附が消費ではなく、課税されるべき所得から除かれるべきであるという見方に基づく。米国アンドリュース教授が提唱したこの説では、寄附は現実の財やサービスを消費したわけではなく、所得を正確に把握するために所得控除が認められるべきであるとされる。しかし、寄附を行う者がいつ、どこに、いくら寄附をするかを自由に決められる点や、寄附によって心理的な満足や評判というリターンが得られることから、寄附が消費に他ならないという疑問も呈されている。

現行の寄附金税制は、これらの根拠のうち、特に「誘因」としての政策的措置であるとの考えが強いとされている。所得税法上の寄附金控除規定は、客観的純所得課税の原則からも主観的純所得課税の原則からも控除を認める必要のない支出を敢えて許容する、租税特別措置であると解釈される。これは、公共ないし公益のための寄附を奨励するための措置であり、有益かつ必要であるにもかかわらず政府の手の及ばない公益的活動への資金援助を促すという積極的意義が認められるものである。

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