現行の所得税における寄附金税制の考え方
所得税における個人の寄附は、所得の任意処分性が強い支出であると認識されており、本来は客観的にも主観的にも所得控除を認める必要のない支出である。しかし、これをあえて控除対象とするのは、生命保険料控除などと同様に、公共ないし公益のための寄附を奨励するための政策的特別措置であると解される。このため、寄附金税制においては、無制限に控除を認めるのではなく、税法ごとに優遇の対象や限度額などの制限事項が設けられている。
現行の所得税における寄附金税制は、平成23年の改正以降、所得控除による方法と税額控除による方法の二つが選択できるようになっている。同改正で控除額の拡大も行われたことから、納税者にとって魅力的な制度であるものの、十分に活用されているとは言えない状況である。現在の税制では、所得控除の場合は所得金額の40%を上限とし、税額控除(政党等寄附金を除く)であれば控除率が40%である。所得控除と税額控除で有利な方を選択した上で併用もできる点は、諸外国と比較しても遜色ない充実した制度であると評価できる。
しかし、寄附金税制の利用実態を見ると、寄附者・寄附金額は増大しているものの、それに伴って寄附金税制の利用が比例して増加しているとは言い難い。その阻害要因として、制度の複雑さや手続きの煩雑さが挙げられる。納税者の中には制度を正確に理解している者が少なく、手続きを面倒だと感じている層が一定数存在することが調査によって示唆されている。特に、給与所得者の多くは年末調整で課税関係が完結するため、寄附金控除の適用を受けるために不慣れな確定申告を行うことへの敷居が高い状況である。
「新しい公共」の概念では、高額所得者の寄附を増やすだけでなく、草の根的寄附の促進が目指されている。この方向性からすれば、寄附金税制の控除額を拡大するよりも、手続きを簡便化し、使い勝手の良い制度にすることがより合致すると考えられる。