所得控除と税額控除の選択制がもたらす意味
現行の所得税における寄附金税制は、所得控除方式と税額控除方式の選択制を採用している。この制度は平成23年の改正で控除額の拡大と税額控除方式の導入が行われ、納税者にとって魅力的なものとなっているものの、その活用は十分とは言えない状況である。その主な理由として、制度の複雑さと手続きの煩雑さが指摘されている。累進税率が適用される我が国の所得税制において、所得控除方式は高額所得者ほど有利に作用する傾向がある。これは、導入当初に高額所得者の節税策となる懸念から税額控除方式が採用された経緯があるものの、より多くの寄附を集めるという政策目的から所得控除方式に改められた歴史的背景に起因する。一方、税額控除方式は少額所得者の所得に対する税負担の軽減割合が大きく、少額でも多くの人から寄附を集める「草の根的寄附」を促進する政策目的に合致すると考えられる。現在の税額控除の控除率は最大40%に設定されており、年末調整の対象となる給与所得者(年収2,000万円以下)に適用される所得税の最高税率が33%であることを考慮すると、多くの納税者にとって税額控除方式が圧倒的に有利に働く状況である。
寄附金控除の適用を阻害する要因として、制度の理解不足や手続きの面倒さが挙げられており、2000円以上の金銭寄附を行った者の半数以上が確定申告をしていない実態が示されている。この状況を改善し、草の根的寄附を促進するためには、控除額の拡大よりも手続きの簡素化が有効な方策であると認識される。年末調整に寄附金控除を対象とすることも一案である。特に、年末調整の対象層にとって税額控除が有利である現状を踏まえると、寄附金控除を年末調整の対象とする際には、税額控除の対象となるものに限って導入することも検討されてよいのではないか。