寄附金控除の年末調整対象化は、過去に源泉徴収義務者の事務負担増加を理由に退けられてきた経緯がある。現行の年末調整制度自体も、所得控除の複雑化、働き方の多様化、プライバシー保護の問題、そして源泉徴収義務者の事務負担の大きさといった課題を抱えている。源泉徴収義務者には、従業員から提供された申告内容の調査権限がないにもかかわらず、適正な源泉徴収を行う法的責任が課せられている現状も存在する。寄附金控除を年末調整に組み入れる際には、寄附先の確認、所得控除と税額控除の有利不利判定、そして寄附者の思想・信条に関わるプライバシー保護といった新たな課題が生じるため、これらの問題に対する慎重な制度設計が不可欠である。
寄附市場の拡大と草の根的寄附の促進を目的として、寄附金控除を年末調整の対象に組み入れることは、寄附者の利便性向上と寄附行為の促進に資すると考えられる。この実現にあたっては、給与支払者の事務負担を最小限に抑える「情報提供方式」を前提とすべきである。
具体的な提言として、第一に、ICT技術の活用による事務負担の軽減、年末調整実施時期の後ろ倒し、源泉徴収を所得税の前取りと位置づけることによる法的責任の軽減が挙げられる。第二に、年末調整の対象とする特定寄附金を税額控除(認定NPO法人、公益法人等への寄附)に限定することで、有利不利判定の不要化とウェブ上での団体確認の容易化を図り、事務負担の増加を抑制する。第三に、寄附者のプライバシー保護のため、選択的確定申告制度を導入し、年末調整をしない選択肢を確保することが求められる。これらの実現に向け、マイナポータルを活用した特定寄附金情報の電子的な取得・連携を早期に実現することが最優先の課題である。以上のように、寄附者の利便性向上と寄附市場の持続的な拡大に資する税制環境の整備が求められるといえる。