所得税の寄附金税制の沿革
所得税法における寄附金税制は、個人寄附を奨励する目的で昭和37年に初めて導入された。当時、個人の寄附金は所得の任意処分性が強いことや、累進課税のもとで高額所得者の節税策として利用される可能性が懸念されたため、税額控除方式が採用された経緯がある。しかし、昭和42年の税制改正において、制度の簡素化と高額寄附のインセンティブ強化を理由に、税額控除方式から所得控除方式へと移行された。当時の立法担当者は、税額控除方式が「制度が複雑であるばかりでなく、所得の多寡にかかわりなく軽減割合が変わらないことも寄附者の心理に適合しないきらいがありまして、折角の意図がそがれるという批判もありました」と説明している。
所得控除方式への移行後も、特定寄附金の対象範囲は度々見直され、拡充されてきた。また、所得控除の足切り限度額も順次引き下げられ、平成22年分以降は2,000円となり、現在の制度の骨格が形成されている。現行制度では、所得控除方式と税額控除方式の選択制が採用されており、多くの所得者にとっては税額控除方式の方が有利であるとされている。
このように、我が国の寄附金税制は制度自体が充実している状況にある。しかしながら、寄附者・寄付金額は増大しているものの、それに伴って寄附金税制の利用が十分に増加しているとは言い難い状況である。その阻害要因として、制度の複雑さや手続きの煩雑さが挙げられる。特に、給与所得者の多くは年末調整で課税関係が完結するため、寄附金控除の適用を受けるために確定申告を行うことは、不慣れな手続きであり、敷居が高い状況であると考えられる。