税理ノート

寄附金税制の利用実態(ふるさと納税の偏重)

寄附市場の現状

近年、我が国の寄附市場は拡大傾向にあり、2020年の個人寄附総額は1兆2126億円に達している。この増加には、ふるさと納税の活用が大きく寄与しており、同年の寄附総額の55.5%を占める。ふるさと納税を除いた寄附額も増加傾向にあり、インターネットを通じた寄附やクラウドファンディングの台頭など、寄附方法の多様化が進展している。東日本大震災以降、寄附への関心が高まり、寄附行為自体が国民にとって身近なものになりつつあると考えられる。このような状況において、2009年に提唱された「新しい公共」の概念に基づき、公益法人やNPO法人等の民間の公益的活動を税制面から支援し、財政赤字が深刻化する中で公共サービスを補完する役割を担うことの重要性が増している。今後の寄附市場のさらなる拡大を見据え、税制による支援の検討は有意義である。

寄附金税制の利用実態

所得税における寄附金控除の適用者数と控除額は、平成24年から令和3年にかけてそれぞれ約6.5倍、約10.5倍と急増している。しかし、この増加の大部分はふるさと納税の利用によるものであることが、総務省のデータとの比較から明らかになっている。ふるさと納税を除いた本来の所得税の寄附金控除の実績は、せいぜい2倍程度の増加にとどまっていると推計される。この現状は、「新しい公共」の担い手であるNPO法人や公益法人等への寄附奨励という観点から見ると、税制が十分に活用されているとは言い難い状況である。

現行の寄附金税制は、所得控除と税額控除の選択制が導入され、控除率も40%であるなど、諸外国と比較しても制度自体は充実していると評価できる。しかし、その利用実態は芳しくなく、主な阻害要因として「制度の複雑さ」と「手続きの煩雑さ」が指摘されている。日本ファンドレイジング協会の調査によれば、2,000円以上の金銭寄附を行った者の半数以上が寄附金控除の申請を行っておらず、その理由として「申告が面倒」「制度を知らない」といった点が挙げられている。特に、給与所得者の多くは年末調整で課税関係が完結するため、寄附金控除の適用を受けるために不慣れな確定申告を行うことは、高い敷居となっている。

この課題は、ふるさと納税のワンストップ特例制度の導入実績から示唆が得られる。同制度は確定申告を不要とすることで、利用者を大幅に増加させた経緯がある。この事実は、寄附金控除の適用手続きを簡素化することが、寄附行為の促進に有効であることを示唆している。したがって、今後の寄附金税制の拡充においては、控除額の拡大よりも、手続きの簡便化を通じて「草の根的寄附」を促進する方向性が合致すると考えられる。

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