寄附市場の現状
我が国の寄附市場は近年急速に変化し、拡大傾向にある。2020年の個人寄附総額は1兆2126億円と推計され、2010年と比較しておよそ2.5倍に増加している。この増加にはふるさと納税の寄与も大きいが、ふるさと納税を除いた寄附額も増加している状況である。寄附手段の多様化も進んでおり、インターネットを通じた寄附やクレジットカード寄附の増加、クラウドファンディングの台頭などが特徴として挙げられる。また、災害を契機とした寄附やSDGs関連の寄附への関心も高まっている。こうした環境変化は、寄附という行為自体が国民にとって身近なものになりつつあることを示唆しており、今後の寄附市場のさらなる拡大を見据えた税制面での支援は有意義なものと考えられる。
寄附者の未申告と税制上の課題
寄附市場の拡大にもかかわらず、現行の寄附金税制が十分に活用されているとは言えない状況である。寄附者・寄付金額は増大しているものの、それに伴って寄附金税制の利用が増えているかといえば、そうとは言い難い。特に、ふるさと納税の利用実績が全体の増加に大きく寄与しており、本来の公益法人等への寄附金税制の利用実態は限定的であると推計される。
寄附金控除の適用を阻害する要因として、寄附者の確定申告実施状況に関する調査結果が示唆に富む。2,000円以上の金銭寄附を行った者の半数以上が確定申告を行っておらず、税制優遇を受けていない実態が明らかになっている。未申告の理由としては、「申告によって還付される金額が少ない」「寄附金控除制度そのものを知らなかった」「申告するのが面倒だった」といった点が一定数存在することが指摘されている。また、ふるさと納税のワンストップ特例制度を利用した者が、特例対象外の寄附について控除申請を漏らしている可能性も示唆されている。
現行制度では、給与所得者が寄附金控除の適用を受けるためには、年末調整では対応できないため、不慣れな確定申告を行う必要がある。この手続きの煩雑さが、草の根的寄附の促進を阻害する要因の一つであると考えられる。過去には寄附金控除の年末調整対象化が検討された経緯があるものの、源泉徴収義務者の事務負担増加、不正行為防止の必要性、そして寄附者のプライバシーに関する懸念が課題として挙げられ、実現には至っていない。特に、所得控除と税額控除の選択の複雑さ、対象となる多数の寄附先団体の確認負担、さらには寄附先の情報が個人の信条や政治思想を露呈する可能性といった問題は、慎重な制度設計を要する点である。